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HELLSING 平野耕太 感想


HELLSING

平野 耕太



マイバイブル。
我が聖書。

漫画という媒体を以て、これ程興奮させられた事は無い。
……否、これを天秤にかけること自体が間違っているのだろう。
この作品はあまりにも頭抜けている。完全に狂ってしまっている。最悪に完成してしまっている。
偶像たる狂気の集大成だ。
世界には幾千幾万もの書物が存在するが、これと比べられるものを私は知らない。
「面白い」ものならば、ありふれている。
「感動する」ものも、ありふれている。
「泣ける」ものも、ありふれている。
それらは、世界に五万と存在している。

……しかし、これほど狂ってしまった作品が、一体どれほどあるというのだろう。
コレを描いた平野耕太という人間は、漫画家というよりはむしろ重度の精神病患者なのではないのだろうかと疑ってしまうほどだ。
私たちには見えないナニかが、見えているのではないだろうかと疑ってしまうほどだ。

それほどまでに、コレは他と違っている。

……良い作品というものは、どんなものにせよ「引力」を持っている。
その作品に惹き込む、「引力」を持っている。
素晴らしい作品こそ、その力は大きくなる。

だが、コレはどうだろう。
私はコレを読んでいるとき、確かに引き込まれた。
しかしそれは引力などという生易しいものではなかった。
強引に鎖で縛り付けられているような、それ程強烈なものだった。

まるで違う。
根本的に違っている。
「全て」が「全て」と素晴らしいまでに逸脱してしまっている。
それが描写の仕方からくるものなのか。文章の織り成し方からくるものなのか。それは分からない。……しかしおそらくは、それら全てなのだろう。銃という物体が引き鉄だけでは作動しないのと同様に、全てが全て、歯車のようにカチリと組み合わさって、完成してしまったんだろう。

「 HELLSING 」

この世に存在する書物……いや、書物だけでは無い。
この世に存在する幾千、幾万もの、ありとあらゆる全ての作品の中で、この本以上に好きだと言える作品を、私は知らない。

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