【新釈】 走れメロス 他四篇
森見登美彦
この作品には五作の短編が納められております。
どれもこれも粒揃いの一品ではございますが、ここではわたくしが惚れに惚れ抜いた走れメロスについてのみ、語る事に致します。
そう、皆様もよくご存知かもしれません、あの太宰治による不屈の名作、国語の授業にひっぱりだこで、文学史上に名を残す、あの名作でございます。
それを、あの森見登美彦氏が、以前わたくしが尊敬と畏敬の念を以て賞賛されて然るべきだと、目の中に入れても痛く無さそうなほどに絶賛したあの森見登美彦氏が、描き出したのです。
わたくしはこの作品を読みつつ、
「た、確かにこいつぁ走れメロスだ! 話に沿っていなくもない気がしなくともないではないか!」
と、何度そう思った事かもはや分かりません。
これは確かに走れメロスであるのです。走れメロスの形骸が確かに存在しているのです。
しかしそれはあくまで形骸のみで、中身は確固たる森見登美彦氏的世界観。
独特であり、繊細でもある文体、そして愛すべき登場人物。
この世界は完膚なきまでに完成されている。
陳腐な表現を使わさせていただけますれば、わたくしは声を最大限にまで引き上げてただ一言。
「最高」
と、そう叫び、この場の幕引きとさせていただきまする。
敬具。
無題
あら。
この記事にトラックバックする